プレーが遅いプレーヤーは嫌われる。その理由は単純で、スロープレーは他のプレーヤーがプレーを楽しむための時間を奪うことに直結しているから。スロープレーで迷惑を被るのは同伴プレーヤーだけでなく、その日同じゴルフ場でプレーするすべてのプレーヤーが含まれる。
また、ゴルフに対する悪いイメージの一つに、他のレジャーと比べてプレーするのに時間がかかりすぎるという指摘もある。これにはハーフで食事休憩を強制される日本のゴルフ場特有の営業スタイルも影響しているが、ここではスロープレーについて考えたい。
ゴルフのプレーは最大4名を1組として、9ホールの標準プレー時間は2時間15分(135分)とするコースが多い。2時間のコースもある。
これはパー4なら1ホールあたり15分でプレーを終わらせるということを意味する。
(パー3とパー5のホールはセットにして2ホールで30分とする)
1ホール15分の持ち時間で済ませること
あるパー4の1ホールをティーオフしてホールアウトし、次のティーに到着するまでにやることをリストアップして、所要時間を算出してみる。
プレーヤーのストローク
プロゴルフのトーナメントでは、1ストロークの持ち時間は最大40秒(最初に打つプレーヤーは50秒)とされているが、ここでは30秒で計算する。
30秒の持ち時間のスタートは自分の打順になった時点で、エンドはスイングの終了ではなく打ったボールが止まるまでである。200ヤード飛ぶショットの滞空時間は5秒なので、スイングに2秒かかるとして、自分の打順になってから20秒ちょっとでスイングを始動しないと、持ち時間をオーバーする。これはつまり、自分の打順になってからどこに打とうとか、どのクラブで打とうとか考えていると時間が足りなくなるということも意味する。移動中に次にどんなストロークをするか、候補をある程度絞っておき、ボールに到着したら速やかに最終決断をして、これから行うストロークのリハーサル・・・つまり素振りをするくらいの時間しかない。
仮に1組のプレーヤーが全員ボギーでホールアウトできるなら、4名でプレーすると単純計算で5ストローク×30秒×4名で10分、3名でプレーすると7分30秒が1ホールあたりのストロークの所要時間になる。「お先に」のパットでホールアウトできればその時間をボギーパットに含めると考えて、全員が90〜100でプレーする組の所要時間はこのくらいだろう。
全員が100を切れない105〜120のプレーヤー(ダブルボギー基準)だと4名で12分、3名で9分をストロークで消費する。
プレーヤーのストロークは2人以上で同時に行えず、1人がストロークしている間に残りのプレーヤーがやれることはかなり限定される。
カートの移動
国内のゴルフ場でプレーする場合、一般ゴルファーがキャディバッグを担いでプレーする機会はほとんど無く、乗用カートでのプレーを前提とすると、カートの移動もそれなりに時間を消費する。
所要時間の算出にあたり、まずは1ホールにつきカートが移動する距離を算出する。Garmin Approach S62で数回ラウンドした際の18ホールプレーでの平均移動距離が16kmだったので、カートから降りてボールまで歩く距離を2割程度と仮定して、カートの総移動距移動距離は12.8kmとする。これを18ホールで割れば、1ホール(パー4)のカートの移動距離は約710メートルということになる。この移動距離はティーインググラウンドからグリーンまでではなく、次のホールのティーインググラウンドまでの移動も含まれる。
ゴルフ場のカートは、プレーヤーが運転するタイプの場合、最高速度は20km/hで、これが710メートルを一気に移動すると所要時間は2分強になる。リモコンで操作する電磁誘導式の場合、最高速度は10km/h。こちらが710メートルを一気に移動すると所要時間は4分強になる。実際は少なくとも2nd地点とグリーン付近で停止するため、減速している時間と最高速度に到達するまでの時間を加算しなければならないし、停止回数が増えればカート移動の所要時間も増える。
カートの移動は、前述のプレーヤーのストロークと同時に行えないこともないが、カートのルートの近くでストロークしているプレーヤーがいると、ストローク中は移動できない。プレーヤーが運転するタイプのカートは、比較的走行音が大きいためストローク中は移動できないと考えていた方が良い。
プレーヤーが運転するカートは3分、電磁誘導式のカートは5分を1ホールあたりの移動の所要時間とする。
105〜120プレーヤー4名だとカートの種類に関わらず、90〜100プレーヤー4名でも電磁誘導式のカートなら、ストロークとカートの移動だけで1ホール15分の持ち時間を使い切ってしまう(105〜120プレーヤーの電磁誘導式カートなら2分オーバー)。
カートからボールまでの移動
カートからボールまで移動するのも時間がかかる。カートの移動距離として12.8kmを16kmから差し引いた残りの3.2kmを歩行による移動距離として、5km/hで歩くと所要時間は38.5分で、1ホールあたり2分強になる。
カートからボールまで歩くのは、カートが動いている間でも問題ないし、他のプレーヤーのストローク中でも状況次第で問題ないので、丸々2分強が所要時間に加算されるわけではないが、各プレーヤーの意識次第で変わってしまう部分でもある。
ボールを探す
ボールがあると思われる地点に着いてボールが見つからなければ、そこからボールを探す時間が始まる。制限時間は最大3分で、探している間はストロークできないし、他のプレーヤーもボール探しに動員される。カートも先には進められない。
ルールに基づく処置
OBやロストボールの可能性に基づく暫定球のプレー、これは通常のストロークと同様、終わるまで他のプレーヤーは自分のプレーができない。
池などのペナルティエリアに入ったボールの処置、カート道やネットなどの動かせない障害物、カジュアルウォーターや目的外のグリーンの処置にも時間がかかる。処置が終わるまで当該プレーヤーはストロークができないが、ルールをきちんと理解していれば、他のプレーヤーがストロークしている時間に処置を進めておくことができる。
スロープレーの要因と対策
前述のタスクの所要時間を単純に合計するだけでも、1ホール15分の持ち時間では足りなくなることが容易に想像できる。打ち終わったストロークの分析と次のストロークの対策、ホールロケーションの情報収集、歩測や距離計を使った距離の計測、クラブの出し入れやレインウェアの着脱等、前述のタスク以外にもやることはたくさんある。
ストローク数が多い
前述のとおり、アベレージゴルファーでも持ち時間の7割程度をストロークの時間で使ってしまうため、ビギナーはそれだけでスロープレーの原因になる。
プレーが始まってからではどうしようもないが、同伴プレーヤーとして上級者に入ってもらうようお願いしたり、4名ではなく3名でプレー(割増料金がかかる場合もあるが)して、組全体の合計ストローク数が400を超えないように、事前に対策しておくことが望ましい。
ボールの行方を見ていない
ボールの行方を見ていないということは、移動中に次のストロークをどうするか考えるための情報がまったく無いということになる。そしてボールを探す時間も余分にかかる。飛んでいくボールはストロークの成否を判断するための情報源であり、空中であれば風向きや強さを、落下時の跳ね方で地面の固さを判断する情報源にもなる。
ビギナーでも自分の打球くらいは自分で見ていないといけないし、慣れてきたら同伴プレーヤーの打球の行方を見守ることもスロープレーの対策になる。
次のストロークの準備をしていない
自分の打順になる前に準備しておくことは少なくない。
スタートホールのティーショットを除けば、その日のストロークの結果を踏まえて、次のストロークで何を注意するか考えることになるし、ティーショットであれば、グローブをはめておく、ボールとティーペグを用意しておく、ハザードなどの位置や距離を確認しておく、風向きや風の強さを確認しておく。アプローチショットであれば、ピンポジションを確認しておく、おおよその残り距離から使いそうなクラブを複数持っていく、他のプレーヤーのボール位置を見て打つ順番を確認しておく。ハザードや風はティーショットと同じ。ショートアプローチであればパターやサンドウェッジを含め、使用するクラブを持っていく、グリーンの大まかな傾斜を確認しておく。打つ順番の確認もアプローチショットと同様。パッティングなら、カップ周りのの傾斜を把握しておく、他のプレーヤーの邪魔にならないようにグローブを外しておく、ボールを拭いておく、ピッチマークを直しておく・・・などなど。
これらのことを、自分が打つ順番になってからやっているようでは、スロープレーにつながる。
また、ショートアプローチで使ったクラブをストロークした場所や、グリーンの入口に置いてパッティングを始めてしまうと、ホールアウトしてからクラブを回収する時間は同伴プレーヤーを待たせることなる。ショートアプローチで使ったクラブやパターカバーなどは、パッティングの前にグリーンの出口(次のティーの方向やカート停止位置)に移動しておく。
カートの移動が遅い
常に全員がカートに乗って移動するとなると、プレーヤーがストロークを終えてカートに戻るまで、カートはほとんど移動できない。カートが何度も止まったり、飛距離差が大きいと安全のためカートを大きく先に出すことができないので、スロープレーにつながりやすい。ティーショットが飛んでいないプレーヤーがセカンドショットを打ったら、そのプレーヤーを待たずに飛んでいるプレーヤーの近くまでカートを移動させ、そこで合流するようにすれば時間のロスを抑えることができる。
カートを運転しないプレーヤーがいることも、スロープレーにつながる。電磁誘導式のカートでも、カートにはスタート・ストップのボタンがあるので、リモコンを持つプレーヤーがカートの遠くでストロークしている時は、カートの近くにいる他のプレーヤーがサポートするべきである。
また、細かいことだがカートに戻ってくると、クラブをキャディバッグにしまってからカートに乗るプレーヤーが多い。他のプレーヤーがカートに乗り込んでいつでも動けるのに、クラブをしまっている間はカートが移動できないので、スロープレーにつながるだけでなく他のプレーヤーの時間を奪っている。カートを運転するプレーヤーを除き、クラブを持ったままカートに乗ってまずは移動し、移動先でクラブをしまうよう習慣づけたい。
プレーが遅いことを自覚していない
良いトシした大人に「あなたのプレーは遅いですよ」と指摘してくれる人は少ないので、プレーが遅いことを自覚するのが、そもそも難しかったりする。
「前の組も遅れているから」といって「自分もゆっくりプレーしていい」ということではない。
1ホール15分でプレーするために自分が足を引っ張っていないかどうかが判断のポイントである。
まとめ
スロープレーかどうか判断するのは自分自身ではない。
プレーヤーは、他人(同伴プレーヤーだけではない)に迷惑をかけずにプレーできるようになって、初めてゴルファーとしてスタートが切れる。スコアはその要素のほんの一つに過ぎない。
スコアを気にするよりも、スロープレーにならないようストロークの準備やカートの移動に気を配れるようになることが優先だと考える。
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