2020年1月にArccos Caddieを購入し、半年間で15ラウンドほど使ってみたので、使用感を整理しておく。
Arccos Caddieで何ができるか
Arccos Caddieは、一言で言うとゴルフのプレーを分析するためのツール。
Arccos Caddieではプレー時にストロークした地点を登録し、カテゴリ(ドライビング、アプローチ、ショートゲーム、パッティング)ごとの貢献度を分析することができる。既存の分析データ(フェアウェイキープ率、GIR、リカバリ率、平均パット数)では切り捨てられてしまう距離の情報を含めてプレーを分析することにより、重点的に取り組むべきショットのカテゴリが明確になる。「スコアアップのためにはパッティングやショートゲームを重点的に練習するべき」といった感覚に基づく「常識のウソ」に惑わされ、効果の低い練習に時間を費やさなくても良くなる。
GPSナビの機能も有するようだが、利用したことがないため評価は差し控える。

【結論】
貢献度分析としてはGarminよりも正確に分析できて分析項目も多いが、ショット検知の仕組みがイマイチで使い勝手が良くない。また、サブスクリプション制に移行予定で、高額な利用料が必要になる。
他の分析ツールと何が違うか
ゴルフネットワーク、ゴルフダイジェスト、楽天等が提供しているスコア管理アプリでは、フェアウェイキープ率、GIR、リカバリ率・サンドセーブ率、平均パット数等のデータでプレーを分析することができる。前述のようにこれらのデータは距離の情報を一切考慮していないため、プレーの課題を正確に見極めることが難しい。
例えばフェアウェイキープ率。これはパー3のホールを除くティーショットの回数を分母として、フェアウェイキープに成功した回数を割って算出する。ミスショットしてグリーンまで250ヤード以上残ってもボールがフェアウェイにあれば成功としてカウントすることになるし、ナイスショットがグリーン近くまで飛んでもラフやバンカーに入れば失敗として集計することになる。ショットが安定しているプロゴルファーであれば一定の指標にはなり得るが、アマチュアゴルファーではフェアウェイキープ率が高いからといってティーショットが上手いということにはならない。
GIRも同様。GIR(Green in Regulation:パーオンは和製英語)は規定打数(パー4なら2打)以下でグリーンオンした回数をプレーしたホール数で割って算出する。グリーンまで250ヤードの距離からオンさせても、30ヤードの距離からオンさせても同じ1回としてカウントされるし、カップまで何メートルの距離にオンしたかという点も考慮されない。
以降、リカバリ率・サンドセーブ率、平均パット数にも同じ問題点がある。
ストロークごとの貢献度を算出する方法
ストロークごとの貢献度はArccos Caddieのようなツールを使わなくても算出できる。必要な情報は、プレー中のすべてのストロークの残り距離とライ。プレーする際にこれをすべて記録しておく。
算出にはショットリンクデータを参照する。ショットリンクデータとはPGAツアーの全選手のショット地点を記録し、ライと残り距離ごとにホールアウトまでに要する平均ストロークを算出したもの。これを記録したプレーのデータと比較する。
例えば400ヤードのホールのティーショットを残り160ヤードのフェアウェイに打った場合、ショットリンクデータのホールアウトまでに要する平均ストロークでは3.99から2.98になるため、このティーショットでは0.01打貢献したことになる。これがラフに止まってしまうと同じ残り距離でも3.23なので、ティーショットは-0.24打の貢献つまり足を引っ張ったことになる。
これをパッティングも含めたすべてのストロークで算出する。
Arccos Caddieはどうやって使うか
Arccos Caddieを利用するにあたり、事前準備としてスマートフォンにアプリをインストールし、すべてのクラブのグリップエンドにセンサーを取り付けて、スマートフォンのアプリと連携する。
スマートフォンアプリにはプレーするコースのデータをダウンロードし、スタートする前にアプリを起動してプレーを開始する。
クラブに取り付けたセンサーはグリップエンドが上を向くとONになり、その状態でショットするとスマートフォンアプリが打球音を検知し、GPSの位置情報からアプリのコースマップ上に使用クラブの情報とショット地点を記録する仕組み。ショットの飛距離は次打のショット検知により記録される。
Arccos Caddieの良い点
比較的安価な費用で利用開始できる
今時スマートフォンは誰でも持っている前提とすれば、14本分のセンサーを購入すれば利用開始できる。センサーのセットは3万円程度で購入でき、追加の費用は必要ない。 ⇒第3世代のセンサーからサブスクリプション制に移行した。センサーの電池は5年程度持つとのことで、追加のセンサーは単品で購入できる。(第3世代のセンサーを混在させた時点で、サブスクリプションに加入しないと利用できなくなる、もしくはセンサーの追加ができないと推測)
スマートフォンアプリは無料で利用できる。

第3世代のセンサーからサブスクリプション制に移行して、ランニングコストが発生するようになったので、費用面のメリットは無くなった。
ショット検知はリアルタイムに反映
プレー中に検知したショットは、スマートフォンアプリにリアルタイムに反映され、その場で修正することもできる。もちろんプレー後に編集することもできる。編集の操作も直感的で分かりやすいと思う。
使用ティーが選択できる
少なくとも自分のホームコースでは、使用するティーインググラウンドをフルバック、バック、レギュラー、レディースの4カ所から選択できる。また、スタートホールも選択できるので、INスタートでも問題ない。逆に言えば、適切なスタートホールを選択してスタートしないと、GPSだけでは適切なスタートホールを自動で選択してくれないということかもしれない(未検証)。
コースマップは航空写真
スマートフォンアプリのコースマップは航空写真で表示される。隣のホールも部分的に表示されるため、プレーの振り返りがしやすい。グリーンはのっぺりしたイメージ図に切り替わるのが少し残念。
Arccos Caddieのイマイチな点
プレー時に使用できるクラブは14本まで
練習ラウンドでは競技で使用しないクラブをテストしたりすることがあるが、14本を超えるクラブはプレー中にショットの検知をすることができない。センサーを取り外してクラブを入れ替えることはできる。
プレー中はスマートフォンを身につける必要がある
Arccos Caddieのショットの検知はスマートフォンのマイクとGPS機能を利用するため、プレー中は常時スマートフォンを身につけている必要がある。身につける位置は左前ポケットが推奨されているが、スイングの邪魔なので私はベルトポーチを用意してスマートフォンを収納している。ハッキリ言ってカッコ悪いし、スマートフォンの持込が禁止されている競技ではショットの検知ができなくなってしまう。スマートフォンアプリの電池消費は、スマートフォンの電池がヘタっていなければ18ホールのプレー中のショット検知には問題なく使用できる。
スマートフォンを使用しないショット検知の方法もあるが、後述のとおり現時点で使用に耐えない。
AppleWatchは電池が18ホール持たない・アプリとの連携がモタつく
Arccos CaddieはApple Watchアプリも提供されていて、スマートフォンの代わりにApple Watchでショット検知ができる。スタート時にスマートフォンアプリとApple Watchアプリを連携すれば、プレー中はスマートフォンをカートやキャディバッグに入れておいてOK。検知の精度は問題ないレベルだが、電池の消費がハンパなく18ホールのプレーが終わるまで持たない。ハーフ休憩時に充電を試みるも、Arccos Caddieのアプリにはプレーを中断する機能が無く、電池の消費に充電が追いつかず、ハーフ休憩中にも電池残量がみるみる減っていく。ハーフ休憩の時間にもよるが12〜13ホールでApple Watchの電池残量がゼロになりショット検知が強制終了し、スマートフォンでのショット検知に切り替えることもできない。新品のApple Watchで18ホールスループレーという限定的な条件下であれば、もしかしたら使えるかもしれない。
また、Apple Watchでプレーを開始する際に、スマートフォンアプリとの連携がモタついてスタートに間に合わず、ショット検知を断念したことがあった。プレー中の電池消費を考えると、できるだけスタート直前にプレーを開始したいので、Apple Watchアプリ単独でプレーを開始できるようにするなど、回避方法を用意しておいて欲しいところ。
Arccos Caddie Linkは日本未発売
Arccos Caddieのショット検知にはArccos Caddie Linkという専用のデバイスを利用する方法もある。ベルトにクリップで取り付けることができ、見た目はかなりスマートになる。残念ながら日本では発売されていないため、検知の精度や電池の持ちを評価することはできない。
誤検知が発生する
同伴競技者が近くでショットする状況でクラブのセンサーがON(ヘッドを下にしてクラブ立てている状態)になっていると、打球音をスマートフォンのマイクが拾って誤検知が発生する。特にティーショットは打球音が大きいので誤検知が発生しやすい。誤検知を防ぐには、グリップを下にして同伴競技者のショットを待つか、自分の打順までバッグからクラブを取り出さないようにする必要がある。
打球音をスマートフォンのマイクで検知する仕組み上、グリーン上では特にショートパットが検知されないことが多く、同伴競技者のプレーを待つ間もセンサーがONになるため、誤検知の可能性も高い。
センサーの電池は交換できない(使い捨て)
すべてのクラブに取り付けるArccos Caddieのセンサーは、スマートフォンアプリとの連携のために電池が内蔵されている。センサーの電池は充電することも交換することもできず、電池が切れたセンサーは買い替えるしかない。スマートフォンアプリでセンサーを診断する機能があるが、電池残量が表示されるわけではないので、センサーは突然使えなくなる。
パター用センサーが単一障害点
Arccos Caddieでショット検知を利用するには、パターを含む8本以上のクラブをスマートフォンアプリと連携しておく必要がある。パター用のセンサーは専用で、他のクラブのセンサーで代用することができない。つまり、パター用センサーの電池が切れたり壊れたりすると、新しいセンサーに取り替えるまで他のセンサーが健在でもショット検知の機能全体が利用できなくなってしまう。万全を期すなら予備のセンサーを用意しておく必要がある。
まとめ
手作業で5ラウンドほどストロークごとの貢献度を算出したことがあるが、記録も集計もかなり大変だった。Arccos Caddieを使用しても完全に自動化できないものの、記録と集計の手間はかなり省力化できるので、それだけでも使用する価値はある。
Garminと違ってグリーン上のプレーを編集して正確な距離に修正できる(Garminはグリーン上以外のプレーのみ編集可能)ので、スマートフォンを身につけてプレーしなければならないというデメリットを差し引いても、現時点で貢献度分析ツールとしてはGarminよりArccosの方が優れている。
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